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認知症

老年期認知症 (Senile dementia)

 高齢化率が25%を超えたわが国では、急増する認知症高齢者が大きな医療・社会問題となっている。久山町における認知症の疫学調査は、1985年に65歳以上の全高齢住民を対象とした認知症および日常生活動作(ADL)の有病率調査を皮切りに開始された。その後1992年、1998年、2005年、2012年にも同様の調査が実施され、各調査の受診率はいずれも92%以上と高かった。時代の異なる認知症の有病率調査の成績を比較すると、認知症、特にアルツハイマー病(AD)の有病率は人口の高齢化を超えて大幅に増加した。また、認知症は重度のADL障害者における最も頻度の高い原因疾患だった。

 追跡調査の成績から認知症発症例の原因別内訳について検討した結果、一番多かったのはADの45%で、次いで血管性認知症(VaD)の30%、混合型認知症の12%の順で、純粋なレビー小体型認知症は4%と少なかった。

 危険因子の検討では、中年期および老年期の高血圧は血管性認知症(VaD)発症の、糖尿病は主にAD発症の有意な危険因子だった。神経病理学教室との共同研究では、糖負荷後2時間血糖値やインスリン抵抗性の上昇はADに特徴的な病理学的所見の一つである老人斑の出現と有意に関連した。また、APOE-ε4遺伝子型は日本人においてもAD発症の強力な危険因子であった。

 防御因子の検討では、認知症の予防につながる食事パターンについて検討した。これまでに認知症発症との関連が報告された栄養素と関連する食事パターンを縮小ランク回帰法により検討すると、大豆・大豆製品、緑黄色野菜、淡色野菜、藻類、牛乳・乳製品の摂取量が多く、米の摂取量が少ないという食事パターンが抽出された。この食事パターンには、果物・果物ジュース、芋類、魚の摂取量が多く、酒の摂取量が少ないという傾向も認められた。次にこの食事パターンをスコア化し、追跡調査において食事パターンスコアと認知症発症との関係を検討した結果、この食事パターンの傾向が強い群ほど全認知症の発症リスクは有意に低下した。この有意な傾向はVaDおよびAD発症でも観察された。

 減らすと良い食品となった米を単品で見ると、その摂取量と認知症発症との間に明らかな関連は認めなかった。一定の摂取カロリーの中で、米(ごはん)の摂取量を減らして予防効果がある他の食品(おかず)の量を増やす食事パターンがよいことを示しているといえる。一方、増やすとよいとなった食品群と認知症発症の関係を検討すると、牛乳・乳製品のみが認知症発症と有意に関連しており、牛乳・乳製品の摂取量の増加に伴いVaDおよびADの発症リスクは有意に低下した。欧米の追跡研究でADの発症リスクを低下させるとして注目されている地中海式食事法では、牛乳・乳製品の摂取を軽度から中等度に抑えるよう推奨しているが、日本人の牛乳・乳製品の摂取量は未だに欧米人の半分以下と大きく下回っているため、日本人においては牛乳・乳製品の摂取が望ましいという結果になったものと考えられる。

 現在も認知症の実態解明にむけた解析が進行中であり、その成果を認知症の予防に役立てていく予定である。

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